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旧制中学、旧制高女。男女共学その後(4)


<折半交流前後の生徒の感想> 西高の巻(下)

記者は教室に或いは息詰まる様な午後の廊下に片っぱしから當って見た。

「どちらの學校を希望していたか、ですって、そりゃあこちらだわ」 「私も」 「私は断じて東だった」 「私どちらでも良かったわ」 「何故ですって馴れて居る方が良いし、それに近いもの」 「こちらの方が綺麗ですもの」 「私は東の方が近いし設備が良いらしいから」 私は今までよく転校していたから落着いてやっていきたかったの」 「私はどちらでも良かった、運を天に任せてね。でもお友達とは一緒に居たかったわ」 案外中学行きが多かったらしい。

「行く學校が決まった時はお友達との別離にはらゝと落涙」 「私も情けなかったわ」 「私は願い事が叶って大満足」 「敗戦の哀れさを此の時程痛切に感じた事はなかったわ」 「余り籤が公明正大すぎて文句の言う相手がなくて只くしゃゝ」 悲喜交々と言う所らしい。

「交流の方法ですか、お友達も近く同士だし近くなるもの地區制の方が良いと思ったわ」 「後がうるさいから抽選の方が良いと思ったわ」 「今となっては籤が恨みの種」 「まあゝ成る様にしか成らないからどちらでもと思ったわ」 案外「我れ自然の成り行きに逆らわず」 と言ったのが多かった感。

「共學になっての感想ですか、講堂での態度等騒々しい事此上なし。少しも落ち着きませんし先が案じられます」 「同感だわ」 「床が汚れていくのも情けないわ」 「何となく雑然としたわ」 男生徒の操行表には静粛に要注意の赤じるし。

「共學になり前と今と、どちらが良いかって、勿論前だわね!」 「オブ・コース」 之に共鳴する聲極めて盛ん。「でもそれ程悪くもないわ」の聲もあり。

「理由と言って、騒々しくて、汚くなるし良い事なんか一つもないわ、それに大好きなお友達や先生と離れてしまったもの」 帰らぬ昔のなつかしくと言う恨みの御一聲。「でもそれも當分の事で今に良くなると思うわ。きっとお互いに刺激し合い気分を一新して勉強出来ると思うの」

そうなるのを心から祈る。完

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