「江戸しぐさ」 其の五・(相手への気遣い、心配り)

常に相手を考え、尊重する心 「相手を尊重する江戸しぐさ」 をご紹介。

「どうぞご随意に」 こういうと、少々いかめしく聞こえますが、「随意」とは気まま、思うままにという意味で、江戸では良く使われた、個々の自由意思を尊重する優しい気遣いの言葉なのです。

今なら「どうぞお気楽に」「リラックスなさって」 などと相手の緊張をときほぐす言い方が、江戸しぐさに通ずるようです。

例えば人に本をあげたとき、「ぜひ読んでください」 では相手にプレッシャーを与えます。「ご随意に」 と無理な押し付けをしないほうが、相手も気持ち良く受け取ることができます。

「お心肥(おしんこやし)」 人間はおいしいものを食べて身体を肥やすことばかり優先するが、それ以上に心を豊かにし、学問(四書五経)を学び、人格を磨くことに努めるべきだという戒めです。それも書物から学ぶだけではなく、手足を動かし自分で体験して考える実践が大切だと教えています。IQ(知能指数)よりEQ(心の知能指数・感性の豊かさ)を優先させた含蓄のある言葉です。

「三脱の教え」 初対面の人には年齢、職業、地位を聞かないルール。この三つの先入観が入ると、とかくフイルターをかけて人を判断してしまいがちで本当の人間を見る観察力、洞察力が曇ってしまうからです。一流校や大企業の肩書に弱い人は、三脱の教え=実践して人柄を見抜く力を身につけてほしいものです。

性差を尊重した「女しぐさ 男しぐさ」 玄関先の履物の脱ぎ方ひとつで、その家のおつき合いしぐさがわかります。履物は履くときのことを考えて脱ぎます。

江戸では町内の寄り合いなどがあると、女性は上がり框の近いところに、男性は先に来ても上がり框から一尺離れて遠いところに履物を脱ぎ揃えました。男性は足を広げて跨げるけれど、女性にそれをさせたくないという男性の優しい配慮があったからです。今なら女性の脚も長くなり、ズボンをはいているし、跨いでしまうでしょうが。

江戸の男性が女性に思慮深かったのは、「女性は人間の始まりのこと」つまり将来を担う子どもを生み育てる重要な役割を担っているという頭があったからです。女性差別はありませんでした。

商売に女性のカンやマネージメントは大いに活用され、男性も認めていましたし、旅籠や料亭は女将が取り仕切るのが当たり前、その手腕が経営の成否を問われました。男性と女性とでは、見るからに異なる性差があります。江戸では性差を尊重し、男はより男らしく、女はより女らしく 「らしさ」 を競ったものです。

次回もこの続きを紹介します。

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