江戸しぐさ 其の八 (年代しぐさ)

「年代しぐさ」 志学(しがく 十五歳)、弱冠(じゃっかん 二十歳)、而立(じりつ 三十歳)、不惑(ふわく 四十歳)、知名(ちめい 五十歳)、耳順(じじゅん 六十歳) のしぐさがそれぞれありました。

江戸の町衆は年相応のしぐさを互いに見取り合って、文化的、人道的に暮らしていた。例えば歩き方にしても、志学の代は駆けるように歩き、弱冠の代は早足、而立の代は左右を見ながら注意深く歩いた。志学の代でぐずぐず歩いていると、弱冠の代がたしなめ、不惑の代が若いつもりで駆けたりすると、腰を痛めるといわれた。

耳順(還暦)の代の「江戸しぐさ」は、「畳の上で死にたいと思ってはならぬ」「おのれは気息奄奄、息絶え絶えのありさまでも、他人を勇気づけよ」だった。六十歳を越えたら、他人のためにはつらつと生き、いつくしみとユーモアの精神を忘れないように心がけた。耳順の心得は、なによりも若者を立てることでもあった。

こうした「年代しぐさ」のバックボーンには共生の土壌があった。若者には年長者に敬老の思いがあった。自分よりも体力的にハンディキャップのある年長者を常に思いやる「くせ」が身についていた。

「稚児しぐさ」 には大人の資格がない。稚児というのは子供のこと。人の迷惑を考えない子供っぽい振る舞いを「稚児しぐさ」という。例えば、電車の中で化粧をしたり、物を食べたり、どこでも構わず座ったり、タバコのポイ捨てなど。こんな事を平気でする人は無神経といわれてもしかたないし、一人前の社会人とはいえません。「稚児もどり」ともいいます。

江戸しぐさではこの 「稚児もどり」 を厳しく戒めました。

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