江戸しぐさ 其の九 (半畳を入れる)

「半畳を入れる」 江戸市中にはたくさんの芝居小屋があった。当時は椅子席ではなく座布団がわりに小さな筵(むしろ)を敷いて座って見物する。その筵のことを半畳という。役者が下手な芝居をやると、客はその半畳を舞台に投げ入れて怒りを表現した。

そのことから「半畳を入れる」とは、非難したり、からかったりすることをさすようになった。

間同士で半畳を入れるのは、相手をバカにするので、本来品のない行為とされ、するべきことではなかったが、年上の人間は、年下の人間に対して半畳を入れることが許された。ただし、やたらに半畳を入れるのではなく、年下の者の発言を批判したり、間違いを正す場合のみ、ひとつのしぐさとして容認されていたのである。

つまり年長者として間違いを正す資格があったからです。お年寄りが言うことを「古い」といって取り合わないのは愚かなことで、江戸ではお年寄りの経験からくる知恵や意見は尊重されました。

今のお年寄りは、若い者に半畳を入れる勇気も自信もないようです。若い人も、お年寄りを人生の先輩として、たまには暮らしの知恵をお借りしてみてはどうですか。

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