江戸時代に庶民レベルまで行き渡ったのがタバコである。はじめは贅沢品だったが、各地でタバコの栽培が盛んになり、葉を刻んだ刻みタバコが広く流通した。
今のように二十歳にならないと吸ってはいけないという規則はなかったものの、喫煙に対しては常識的な決まりがあった。
まず、歩きながら吸わない。これは火事を予防するためだ。吸う場合は、必ず座って吸うこと。茶店の縁台に腰をかけて吸おうとしても、そこに灰皿の用意がなければ吸わない。つまり、灰皿が置かれていない場所は禁煙だったのだ。往来は城へ続く廊下と考えられたから、ポイ捨てなどとんでもない。
また、料理屋などの店でも、相手がタバコを吸わない人だったら、こちらも吸わなかった。もちろん、相手が「どうぞお吸いください」と言えば吸ってもよかったが、相手が吸わない場合は控えるのが普通だった。このようなしぐさすべてを 「喫煙しぐさ」 と呼んでいた。
余談:以前、乗り物の不正乗車を「キセル」と言っていたのをご存知だったでしょうか。煙管(きせる)はご覧のように入り口、出口の両端だけが金属になっています。お分かりかな?また、無賃乗車を薩摩守(さつまのかみ)とも言いました。
これってご存知の方はちょっとご年配か(爆笑)。