例えば国の政治をこれからどうするかという時に、A案とB案の二つがあるとします。東京都民はA案がいいと考え、山梨県民はB案がよいと考えている。島根県民もB案がよいと考えたとする。
もし、本当に一人一票が実現されれば、この二つの案では投票する人が多いであろうA案が可決されるべきところですが、実際に選挙を行うとA案賛成者議員が一人、B案賛成者議員が二人、国会で議決を行うので、結果的にはB案が国のとるべき案として採用されます。民主主義を唱えておきながら、国内の少数意見が「多数派」としてカウントされることには、みなさん違和感を覚えると思います。
実際には都市部の選出議員を増やしてこれに対処しようとしているわけですが、それでもなお充分な手当とは言えません。そもそも居住地によって、一票の重みに格差が生じること自体が憲法14条の「法の下の平等」に違反します。違憲状態です。
国家の最高法規たる憲法に違反する以上、違憲であり、その効果は無効になるべきところです。しかし、裁判所には「選挙のやり直しをさせる」ことが事実上不可能です。選挙にはあまりに多くの経費や時間がかかるためです。
これまで、一票の格差が問題になった訴訟において、裁判所は「違憲状態である」と宣言し、本来は無効であるが、事実上選挙のやり直しをすると国家的損失が大きいとして、「選挙自体は無効なんだけど、今回は特別に結果を有効にしてあげますよ」という「事情判決の法理」を乱発してきました。
違憲状態であることを明確に宣言することで、立法府(国会)に対して、なんらかの格差是正の措置をとるように働きかけてきました。
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しかし、いくら事情判決を連発しても事態は少しも進展しているとは思えませんね。黄門さんの印籠より効き目がないようです。
「いついつまでに是正しなければ、次の選挙は無効にしますよ」といった、具体的に強制力のある事情判決は不可能なのでしょうか。
法律に疎いズブの素人の素朴な疑問です。法の不備なのか。法曹界の怠慢なのか。自己本位で国家感のない政界にそれを求めるのは百年河清を待つの感があります。
井上様
裁判所がいくら事情判決を出して警鐘を鳴らしても、国会はやはりなにも動きませんでした。
司法界の怠慢ではなく、国会の怠慢です。
衆議院議員は、いつ解散されるかわからないものですから、それとなく気にはしていたようですが、参議院議員は、一度当選してしまえば、6年間は議員の職にいることができ、年間1億1000万円の歳費を受け取ることができ、議員宿舎に住むこともでき、万々歳でありますから、あとのことは知ったこっちゃなかったのです。
しかし、昨今の政権交代に関連して、ねじれ国会が頻発しております。衆議院で民主が与党になれば、参議院では自民が多数派になるという、わけのわからんことになっております。
裁判所(裁判官)は、直接国民から選ばれたわけではないので、その権威の正当性ではどうしても立法府にはかないません。だから、事情判決を出すことで、次の選挙までになんとかしておいてね~とだけ厳重注意しておくにとどまったのです。
しかし、ねじれ国会が相次ぎ、国民の1票の価値があいまいになっては困るということになると、ついに裁判官は違憲判決を出すことで選挙のやり直しを命じることになります。しかし、選挙のやり直しになるとまた莫大なコストがかかるので、いまのところ「違憲状態である」として、立法府に対してかなり強いメッセージを発することにしました。これが今の現状です。
いついつまでに是正しなければ次の選挙は無効にしますよ。というのはなかなかできません。次の選挙はいつかわからないし、裁判所は今回(過去)の選挙が合憲か違憲かしか判断する権能がありません。おそらく今回の件が最高裁にあがった場合には、「違憲状態」であるとして、傍論で立法府のことをボロカスに書くと思います。次の選挙は無効です。と言ってみても、判決主文にしか拘束力がないので、立法府に是正を強く求めるしかありません。
しかし、ようやく立法府(行政府)も少しではありますが、動き出しています。
最高裁判所の判断が楽しみでしかたない。特に傍論で何をいうのかなというのが楽しみで仕方ないというのが筆者の現在の心境です(笑)
そうですか。事情はよくわかりました。
現制度の問題点は、一県一票の地区割りにあるのは衆知の事実です。これは激変緩和措置だそうですが、もうすでに5回もやっています。不偏不党の第三者機関って、ないのでしょうか。
国会議員の自覚に待つほかないとは、ユートピアですねぇ。