江戸しぐさ 其の拾 (行く先は聞かぬ)

相手の領分を侵さない気配り 近所を歩いていると知り合いが何処かへ出かける場面に遭遇することがある。ついつい「どちらへ?」と聞きたくなるものだが、江戸では、こんな場合行き先を聞くのは野暮とされた。

こんな場合は「お出かけでございますか?」とのみ言うのが正しいしぐさだった。相手が引き留めない限り、そのまま会釈して去っていくスマートさを持っていた。これがセンスのいいふるまいです。

かりにどんな親しい間柄でも、行き先は聞かない。「お出かけでございますか?」と言ったとき、相手が「実は、どこどこへ・・・」と喋る分には、もちろん聞くだけで、それ以上は尋ねない。

相手が喋ったからといって、どんどん相手の領分へ踏み込むのは、品のない対応なのである。

でも挨拶は大切です。顔見知りがどこかへ出かけるのを見かけたら知らん顔をせずに、「おでかけですか?」と声をかけましょう。気持ちよく送り出してあげることが大切です。

たとえば、社内のエレベーターで、ほとんど口をきいたことのない他の課の人と乗り合わせたときなど、なんの挨拶も交わさないのは、ちょっと大人気ないですね。話すことがなかったら目礼か会釈くらいはしたいものです。「目は口ほどにものを言う」と言われるとおり、これだけでも雰囲気がかわります。

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