一票の格差(4)

しかしながら、国会自体が国政選挙で選ばれた議員によって構成されるので、この格差を是正しようという動きにならない。東京選出の議員が一票の格差を是正する法案を提出しても、高知や島根、新潟選出の議員がそれをつぶしてしまう。そんな法案が通れば自分の議席がなくなるかもしれないのだから、当たり前といえば当たり前ですが、そんなおかしな事態を長年日本国民は甘受しているのです。

しかし、2009年にはついに政権交代が行われ、与野党が逆転しました。このように与野党の選挙戦が激しくなればなるほど、国民の一票の重みが増してきます。一票の重みは増しているにもかかわらず、一票の格差は依然として存在している。

この事態を受け、全国各地で一人一票の原則を主張する弁護士グループが訴訟を提起しています。すでに新聞報道などでご存知の方も多数いらっしゃるとは思いますが、全国各地の裁判所で「違憲」判決や「違憲状態である」との判決が相次いでいます。

「違憲」と「違憲状態」の違いですが、「違憲」であれば、当然選挙の効力は無効になりますので、選挙はやり直しです。他方、「違憲状態」であれば、選挙の効力は有効として取り扱うものの、「状態として違憲であるから早急な対処が必要である」と、司法府が強い勧告を発している状態です。

原告勝訴か原告敗訴という違いはありますが、どの道負けた側は上告するでしょう。こうして最終的な判断が最高裁判所に持ちこされることになります。

最高裁判所は今までは政治に迎合的な判断をしてくることが多かったのですが、同じ問題が前回最高裁まで争われたときは、早急な対処が必要であるとして、極めて強い態度で立法、行政に対策を促しています。今後の行方が楽しみな問題であります。(完)

一票の格差(3)

例えば国の政治をこれからどうするかという時に、A案とB案の二つがあるとします。東京都民はA案がいいと考え、山梨県民はB案がよいと考えている。島根県民もB案がよいと考えたとする。

もし、本当に一人一票が実現されれば、この二つの案では投票する人が多いであろうA案が可決されるべきところですが、実際に選挙を行うとA案賛成者議員が一人、B案賛成者議員が二人、国会で議決を行うので、結果的にはB案が国のとるべき案として採用されます。民主主義を唱えておきながら、国内の少数意見が「多数派」としてカウントされることには、みなさん違和感を覚えると思います。

実際には都市部の選出議員を増やしてこれに対処しようとしているわけですが、それでもなお充分な手当とは言えません。そもそも居住地によって、一票の重みに格差が生じること自体が憲法14条の「法の下の平等」に違反します。違憲状態です。

国家の最高法規たる憲法に違反する以上、違憲であり、その効果は無効になるべきところです。しかし、裁判所には「選挙のやり直しをさせる」ことが事実上不可能です。選挙にはあまりに多くの経費や時間がかかるためです。

これまで、一票の格差が問題になった訴訟において、裁判所は「違憲状態である」と宣言し、本来は無効であるが、事実上選挙のやり直しをすると国家的損失が大きいとして、「選挙自体は無効なんだけど、今回は特別に結果を有効にしてあげますよ」という「事情判決の法理」を乱発してきました。

違憲状態であることを明確に宣言することで、立法府(国会)に対して、なんらかの格差是正の措置をとるように働きかけてきました。

以下続く

一票の格差(2)

現在国政選挙の選挙区割りは都道府県ごとに行われています。都道府県に1人以上の割合で議員が選出されるように区分けがされている。

しかし、国会議員は、あくまで全員が「国のため」に政治活動を行うべきものであって、選挙区に利益をもたらすためのパイプではありません。だから、都道府県に必ず一人以上の議員を選出するシステムには合理的な根拠はありません。

むしろ、都道府県に一人以上の議員を割り振るために、有権者の少ない地域にも選挙の議席を割り当てるために、少ない人口に対して無理に議席を割り振る結果になります。

このため、山梨では5万票で当選する議員もいれば、神奈川では69万票を得ながら落選する候補者もいるという、小学生が見てもわかるレベルの不平等が生じます。

先の参院選では、1票の格差が5.00倍を超えるという異常事態が発生しています。これは、有権者の票の価値に5倍以上の開きがあるということ。

もっと平たく言いますと、この記事を読んでいる東京都民のみなさんの1票はゴミクズの価値しかありません。島根、鳥取県民の1票に対して東京・神奈川の投票の価値は0.2票です。同じ意見を主張するのにも島根なら1人が主張すればいい。これに対して東京なら5人以上の賛同が必要になります。

以下続く

関西人という偏見(5 完)

さてさて、前回からはさらに遅れましたが、この稿も早めに締めないといけない気がするのでこのあたりで締めくくりたいと思います。

この稿を通じて何をいいたかったというと、東京と関西における「会話の場」への主体性の違いです。

関西人は、ほぼ概ね、ボケなりツッコミなりでその場に「参加」するのに対し、東京の(特に女性)はその場を「観覧」している。

前々稿に書きました、東京の女性の一言。「関西人なんだからなにか面白いことして!」という一言には「私は今から面白いことをするするあなたを観賞します」というメッセージが多分に感じられるのです。その場の会話に参加しよう、その場の空気を自ら作っていこうと考えていればこのセリフはなかなか出てこない。

筆者が初めて上京して、女性と話しているときに東京の女性に特徴的だと思った点は、みな、「うけるー」「おもしろーい」というだけで、それ以上の発展する要素をのせない。会話に「カブせ」や「次へのネタフリ」が少ないのです。ボケ役はボケっぱなし。欲しいツッコミを得られないまま不完全燃焼状態になることも少なくありません。

この点、関西の女性は、聞かれてもないのにその時の話題について自分の意見を表明する癖がついていると思います。

しかも「相手の話を聞いたうえでの自分の意見」なので、他の地方の方々からすると「関西の女の子はノリがいい」ということになるのかもしれません。

もちろん、ジェンダー論からの批判を恐れずにいうならば、「黙って微笑んでいること・自分の意見を表明しないこと=女らしい」のかもしれない。しかし、関東の女性の方も、せっかく会話をするのであるならば、こちらの話にさらにツッコミなりなんなりを入れながら、一緒に場を作る努力をしてほしいなと思います。

関東女性と関西女性には会話への参加意識について大きな相違が認められる。

そんなことを考えつつ、もっと腕を磨かねばと意気込んで今日も一人ツッコミの練習をする筆者なのでした・・・。

(この稿終わり)

関西人という偏見(4)

ところで、最近「ピン芸人」なる種類の人間が出てきたことは皆さんのよく知るところかと思います。もうブレイクしたのはずいぶん前になりますが、我らが加古川東からはレイザーラモンHGという芸人さん(本名・住谷正樹氏、高46回)が出ました。しかし彼はツッコミがあまり得意ではなかった。奇抜な恰好と「フォー」という表現でボケることしかできなかった。そのためそれ以上の活躍の幅がなく、結局すぐに飽きられ、燃え尽きる「一発屋」となってしまったわけです。なんとか新境地を開いてほしいですね。

それに対して、加古川東出身ではありませんが、同じ加古川出身の芸人として急激に成長したのが陣内智則氏です。彼も昔はコンビで漫才を組んでいたけれどもちっとも売れなかったそうです。もう芸人をやめる寸前まで追い込まれたとかなんとか。

しかし、そんな彼を救ったのはたった一回の電車のアナウンスでした。どうも、陣内氏が乗っていた電車のアナウンスの一部におかしなところがあり、彼がそれに対してツッコミを入れたところ、周囲の一般乗客から思いの他たくさんの歓声をあびたとかなんとか。

そこから彼は、「ボケ役を他人に任せてしまい、自分はツッコミに徹する」という芸風にシフトチェンジしていきます。「エンタの神様」などの番組でご覧になられた方もいるかもしれませんが、彼の芸は流れてくる映像にボケを入れておいて、自分はそれにひたすらツッコミを入れるといういわば「ツッコミ芸」です。あらかじめボケがわかっておけば、面白いツッコミも先んじて用意することが出来る。見事な発想だといわざるを得ません。

(次回につづく)

関西人という偏見(3)

例をあげてみますと、ダウンタウンであれば浜ちゃん。著名なお笑い芸人としては明石家さんま氏が挙げられます。特に明石家さんまのツッコミは非常に明快かつ、瞬時であり、そしてどのようなゲストの話であってもそこから面白い部分を抽出する。だからテンポよく面白さが発揮されるのです。ツッコミの上手な人はたくさんの冠番組を持っています。ゲストが誰であれ番組が面白くなるからです。「さんまのまんま」や「さんま御殿」、「恋のから騒ぎ」などは非常に長く続いています。

東京であれば、特にツッコミで多く笑いを取るのは明石家さんまと島田紳助が多く、逆に関西では上沼恵美子、やしきたかじんなどが多く登場します。どなたも非常にツッコミが上手ですね。

一方、ツッコミという概念が確立しているのは、筆者の知っている限り日本くらいのものです。たとえば、アメリカのコメディでは、ツッコミ役はボケの話を膨らませることなく、観客に向かってしかめっつらをすることが多いようです。そしてボケ役も次の発言まで一瞬間を開ける。この「間」によって、アメリカ人は「ここが笑うところなのだ」ということを認識するようです。

ところで、最近「ピン芸人」なる種類の・・・・(次回につづく)

関西人という偏見(2)

さてさて、どうしてトークは滑ってしまうのでしょうか。もちろん「単純に筆者が面白くないのだ」と言ってしまえばそれまでの話になるのですが、それだけで片付くならこんなコラムは書かないわけで。

6年間色々な人と話をしてみて感じたことなのですが、東京と関西のお笑の大きな違いはやはり「突っ込み」にあると思います。

実はコントにおいても漫才においても、重要なのはボケよりもツッコミ。ボケだけでは一瞬で燃え尽きるところをツッコミで一気にボワっと笑を引き起こす。いわば、ツッコミには関西の人間に「今、この人は面白いことを言いましたよ、面白かったのはこの部分ですよ」と示す役割を果たしています。そして、観客は、ツッコミのいうことが極めてまっとうであると感じたときに初めて、自分の中の常識的感覚とボケとの違いに気付き、なおかつツッコミによる心理的な安堵を得たうえで笑ってしまうのです。

この仕組みは実はさまざまなバラエティでも使われています。有名な司会者やコメディアンというのは総じてボケ上手というよりはツッコミ上手。その場にいる人間の何気ない発言をうまくとらえ、そして、瞬時に柔軟にツッコミを入れることで、見ている人の笑いを引き出します。

例をあげてみますと、・・・(次回につづく)


一票の格差 (1)

先の参院選は、自民と民主がそれぞれ伸び悩む中、みんなの党が票数を伸ばすという結果になりました。選挙というと、ついつい結果ばかりが気になってしまうところかもしれません。

しかし、今回の選挙で選挙結果とともに大きくクローズアップされたのが、いわゆる「一票の格差」の問題です。

一票の格差問題・・・・我が国における選挙では、選挙区として都道府県が基準とされ、都道府県の中でも人口数に応じて議席が配分される。しかし、都道府県によってかなりの人口数の違いがあり、厳密に人口数に応じての議席配分が行われているわけではない。各都道府県に最低でも一議席は割り振りがなされるので、人口の少ない県では少数の得票でも当選する可能性があり、人口の多い県では多数の票を得ても落選する事になる。

例えば、今回の参院選では17万票で当選する候補もいれば69万表票を得て落選する候補もいました。しかしながら、当選により付与される議員資格は同じものであり、結果として70万票当選議員と17万票当選議員の発言力は同じになります。

本来であれば一人を当選させる票数は同じであるべきであるのに、実際は同じではない。有権者は一人一票の権利を持っているはずなのに、実際は有権者一人がもつ票の価値は、実は居住地によって大きな格差が生じる。これが「一票の格差」の問題です。

この問題は選挙の中でも特に参院選で毎回のように問題提起され、訴訟になるものです。次稿でもう少し詳しく見てみましょう。

企業経営者の高額報酬(3)

2010年3月決算から、年間「1億円以上」の報酬を得た上場企業の役員は、有価証券報告書に記載しなければならいことになりましたが、6月30日までの提出では、167社・289人が該当します。

基本報酬や賞与に加えて、ストック・オプション、退職慰労金、年間配当収入などがあります。
ご参考までに役員報酬(ストック・オプション、退職慰労金を含む)と、配当収入の合計ベスト10を別表にしました。やはり創業者が多いようです。

企業経営者の高額報酬 (2)

1億円以上の役員報酬開示が今年から始まった。賛否両論、交錯しているがご参考までに、主な企業の公表分をまとめてみました。(■スタッフ注:6月28日時点)

<化学> 資生堂・前田新造社長 1億2100。エーザイ・内藤晴夫社長 1憶3600。アステラス・野木森雅郁社長 1億8000。武田薬品・長谷川閑史社長 2億2300、アラン・マッケンジー取締役 5億5300。第一三共・庄田隆社長 1億7400。

<鉄鋼> 住友金属・下妻博会長 1億3400、友野宏社長 1億2200。神戸製鋼・水越浩士相談役 2億7300。新日鉄・三村明夫会長 1億7060、宗岡正二社長 1億7060。JFE・馬田一社長 1億3394、数土文夫取締役 1億1595。

<精密機器> HOYA・鈴木洋CEO 1億5300。
<サービス> スクウェア・和田洋一社長・2億400。ベネッセ・福島保社長 1億8000。

<商業> 三井物産・大橋信夫前会長 一億9000。三菱商事・小島順彦社長 2億4900。日本調剤・三津原博社長・4億7726。三谷商事・三谷聡社長 2億6000。

<その他製造> 大日本印刷・北島義俊社長 7億8700。バンダイ・上野和典社長 1億3700。アートネイチャー・五十嵐祥剛社長 1億3985。

<電気機器> 東芝・西田厚聡会長 1億700。オムロン・立石義雄会長 1億700。フェローテック・山村章社長 2億6574。ソニー・ハワード・リンガー会長 8億1450、中鉢良治副会長 2億1304、など計7人。パナソニック・中村邦夫会長 1億2200、大坪文雄社長 1億500。

<情報・通信> ソフトバンク・孫正義社長 1億800、など計4人。ヤフー・井上雅博社長 1億5900。エイベックス・松浦勝人社長 2億4900、など計3人。

<金融> みずほ・前田晃伸前会長 1億1000、など計6人。新生銀行・ラフール・グプタ専務 1億1600、など計4人。スルガ銀行・岡野光喜社長 1億4100。

<機械> コマツ・野路国夫社長 1億2900。セガ・里見治会長 4億3500、など計3人。
<倉庫・輸送関連食品> アサガミ・木村知会長 2億953。日本たばこ・新貝康司取締役 1億4200。東洋水産・深川清司会長 1億8300。

<輸送用機器> ホンダ・伊東孝紳社長 1億1500。トヨタ・張富士夫会長 1億3200、渡辺捷昭副会長 1億1400、岡本一雄副会長 1億800、稲葉良じ取締役 1億2400。
タカタ・高田重一郎会長 2億3800、高田重久社長 1億8500。名村造船・名村建彦会長 1億3600。
日産・カルロス・ゴーン社長 8億9000、志賀俊之COO 1億3400、カルロス・タバレス副社長 1億9800、コリン・ドッジ副社長 1億7600、西川広人副社長 1億500、山下光彦副社長 1億200。

<金属製品> 三和・高山俊隆社長 1億600。東プレ・石井恭平最高顧問 1億1100。
<建設> 大東建託・多田勝美会長 2億5800。

<水産・農林> 日本水産・垣添直也社長 1億1600。
<非鉄金属> 住友電工・松本正義社長 1億2445。