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旧制中学、旧制高女。大先輩連の男女共学・騒動記(2)

<抽選風景> 加古中の巻(下)

次いで記者は第三校舎に高二を訪れた。人数の少ない高二では最早二分割は完了し、最後の決定、西行か残留か?

「この封筒二十枚の中には西と書いてあるのが十一枚で白紙が九枚ある。・・・・」

偉大なるXを秘めた白封筒を眼前に望月先生の辯。背後に父兄代表・學校代表・二年各組主任の方々が座を列して居られるのがモノモノしい感じだ。やがて撰ばれたAB各十名は拍手と聲授の内に勇躍その第一歩を踏み出した。左へ一封右に一封、裁断の魔人は刻々と近づく。後十枚・・・九枚・・・見送る生徒は流れ落つあせも拭わず、撰者の顔も心なしか青白く見えた。

後四枚・・・・三枚・・・・一通々々見送る先生の眼、指も無量の感慨を含んで幾らか血走っても見えた。後一枚・・・父兄が立たれた。代表の手は今こそ我々人生の悲しき一頁の思い出に筆を下さんとしているのだ、拍手に絶えられなくなった全生徒の興奮は極度に達し、叫喚と混乱は机も押し倒さんばかり。かくて一分・・・・・紛糾錯綜の内にAだ!否!Bだ!否!・・・・・遂に決定!!

A。Aだ!どっと上がった喚聲と大拍手。あぁ遂に運命の神は采配を高々と振った。斯くして此處に二十幾年自治創造を目的とし質実剛健を持って校風とした我が加古中は生木を割かれるごとく真二つに分割され、永遠にその名を清き加古の水底深く沈淪せしめたのである。

「去らば母校よ、なつかしの友よ、我等去ればとて永久に忘れる事あらず否、その薫香をして西高校に花咲かせ馥郁たる芳香を校内に充たさん、諸君!張り切って行こうぜ・・・・」

「あぁ行けや君、とこしえの友よ。我ら哀惜の念せまればとていたずらに別涙をそそぐに非ず、共に前途は遼遠なり、しかし大望は大人を作る。希望の光を認め、邁進せば万斛の陰雲又何かあらん。自由堂々闊歩せよ。」

お互いに握り合わされた腕と腕、組み合った肩と肩、万感胸に迫りて言葉なけれど誠意は明らかに相通じた。折から正午のサイレンが哀韻として全校庭を震わせ此處に歴史的行事が全くの終わりを告げたのである。

次回は加古女の巻

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