抽選風景 加古女の巻(上)
私達が朝禮を行っている間に、入學考査にも似たる厳粛な抽選場が設けられ、誰が心か明日からの運命を定める殺風景なこの場所にささやかな一輪の花が揺らいでいた。先生方の御指図に従って各學級長は廊下に出で控室に胸をわくわくさせ落着かぬ風態でいる人たちに成績を加味したグループの編成の編成の連絡をとり始め、「次は私位が呼ばれる頃かしら」と人心を愈々動揺させた。
「窓から首を出してはいけない」と再三注意をされ乍ら、目の数が増し、下顎と頭上が重なりあって廊下で組を作っていらっしゃる先生の方へ真剣なというか、不安というのか、鋭い求める眼が集中して行き遂には廊下に七、八人どやどやと押出されて来る状態であった。
蒸暑い天候に焦燥を交えて物苦しい雰囲気の室内には又風變りな人も居て、お得意の播磨言葉でぺちゃくちゃと落ち着き拂ったもの、数回名を呼ばれても我事と気附かなかったのも割合数があった。始めからそわそわしていた家庭科七人連れが結局後に残り、やっと私達の番がと喜び勇んで登場した。では次にこの人達と抽選の一場を覗いてみよう。つづく
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